【映画】悼む人の映画評,分析,感想,ネタバレ

悼む人 ★★☆☆☆ <見てもいい>

 

おみおくりの作法について感想をまとめたところ、ちょうど似たような『死』を扱う邦画として『悼む人』が公開されたので見てきました。

 

以下に感想をまとめていきたいと思います。

 

一点、原作は未読ですのでここではあくまで映画の内容のみとなっている点、ご了承ください。

 

おみおくりの作法について感想はこちら

 

あらすじ

主人公、静人は友人の死をきっかけに、『死を悼む』ことにとりつかれるようになる。

 

彼は、新聞や雑誌の記事を頼りに全国の死の現場に赴いては、死者を悼むことを繰り返す。

 

そんな彼の旅の途中で、死を商売のように扱う雑誌記者の抗太郎、夫を殺しの罪を背負う倖世と出会い、彼らはそれぞれが抱える『死』への感情から静人に苛立ちや興味を抱きながら、関係を持っていく。

 

一方その頃静人の母親は、治癒の見込みのない末期癌を宣告されていた。

悼む人の作品構造について―ネタバレあり―

前回の『おみおくりの作法』に引き続き、『悼む人』についても作品構造を簡単に図示化しておきたいと思います。

 

自由に生きる

 

この映画は、大きくは主人公静人の『死を悼む』という行為を中心に、抗太郎、倖世、母親の死に対する関わり方、考え方が対比される形が取られています。

 

それぞれ、静人の悼むという行為に対し、

 

 ・抗太郎:悼まれる価値のない死をどう扱うか
 ・倖世:罪を犯した人間は悼むという行為を行うことができるのか
 ・母親:死をどのように受け入れ、残される家族に何を残すことができるか

 

という、テーマ性をもった関わり方を見せていきます。(もちろんこれだけではないですが)

 

静人は、死を悼むという世間からは理解されづらい行為について、彼らと関わりながら少しずつ、自分と他人にそれぞれ影響を与えていくという構図です。

 

 

この作品は『死を悼む』ことがテーマではない

物語の主人公にはいくつかのパターンがあります。

 

物語をパターン化することに意味がないことも多いですが、ここでは静人という人間に自分があまり納得できなかったので、少しだけ整理をしておきたいと思います。

 

さて、静人という人間ですが、彼は『死を悼む』という行為に一種憑りつかれた人間として描かれています。

 

こうした人物を描く場合、いくつかパターンがありますが、まず一つ目は、葛藤する人物として描くというパターンです。

 

それは、『死を悼む』という行為について、静人なりに思い悩み、進みたい方向とそれを阻害するもの、または対立軸が描かれ、それらとぶつかる中で答えを見つけていくという形式です。

 

こうしたパターンですと、静人がなぜ『人の死を記憶することにこだわるのか』、『見知らぬ人間の死を記憶することに意味があるのか?』、『静人にそれを望まない人間に対してはどうすべきか?』、『どう生活と折り合いをつけていくのか』といったいくつかの観客の疑問を静人ともに考え、納得し、感情移入していくようなことが可能になりやすいかと思います。

 

が、静人は先にも書きましたが、こういう形式の主人公ではなく、基本的に悩みがありません。
また、旅費や生活費についても、社会人時代の貯金で10年はやれるので問題ない、と、言葉は悪いですが年齢を鑑みた時にかなり非現実的な設定がなされています。

 

彼は、現実の場と死を悼むという非現実的な祈りとの狭間で煩悶することなく、自分の行為に『確信』を持っています。

 

 

次に二つ目のパターンですが、これは純粋善として静人を描いてしまうというものです。

 

例えば『ダークナイト』のジョーカーなどは、この逆で純粋悪として悪いことをしたいからする、という存在として描かれていますが、このように静人を純粋善として描き切ってしまってもよかったかもしれませんが、この作品内ではそのような扱いも受けていません。

 

静人は最後、倖世と『人間宣言』かのようにセックスをしてしまいます。
超然とした存在ではなく、長いこと一緒にいたから好きになってしまった、、、と。
(しかし、悪く言いたくないですが、このシーン大失敗ではないでしょうか。倖世も「あれ?やっぱり男運ない感じで抱かれちゃうの?」と思ってしまいました。)

 

最後に、静人は完全に記憶装置として機械的なものとして機能させるという方法。

 

静人という人間はただただ記憶するだけの人間で、思い悩むこともなにもなく。

 

この作品ではこれが一番近いかもしれません。静人という人間は一種のハードディスクとして記憶のみする存在。

 

ただ、それでも「バックアップないよね?それは?」という観客(僕)の疑問は消えないかもしれないですが・・・。

 

 

静人とは何だったのか?

物語の主人公にはいくつかのパターンがあります。

 

物語をパターン化することに意味がないことも多いですが、ここでは静人という人間に自分があまり納得できなかったので、少しだけ整理をしておきたいと思います。

 

さて、静人という人間ですが、彼は『死を悼む』という行為に一種憑りつかれた人間として描かれています。

 

こうした人物を描く場合、いくつかパターンがありますが、まず一つ目は、葛藤する人物として描くというパターンです。

 

それは、『死を悼む』という行為について、静人なりに思い悩み、進みたい方向とそれを阻害するもの、または対立軸が描かれ、それらとぶつかる中で答えを見つけていくという形式です。

 

こうしたパターンですと、静人がなぜ『人の死を記憶することにこだわるのか』、『見知らぬ人間の死を記憶することに意味があるのか?』、『静人にそれを望まない人間に対してはどうすべきか?』、『どう生活と折り合いをつけていくのか』といったいくつかの観客の疑問を静人ともに考え、納得し、感情移入していくようなことが可能になりやすいかと思います。

 

が、静人は先にも書きましたが、こういう形式の主人公ではなく、基本的に悩みがありません。
また、旅費や生活費についても、社会人時代の貯金で10年はやれるので問題ない、と、言葉は悪いですが年齢を鑑みた時にかなり非現実的な設定がなされています。

 

彼は、現実の場と死を悼むという非現実的な祈りとの狭間で煩悶することなく、自分の行為に『確信』を持っています。

 

 

次に二つ目のパターンですが、これは純粋善として静人を描いてしまうというものです。

 

例えば『ダークナイト』のジョーカーなどは、この逆で純粋悪として悪いことをしたいからする、という存在として描かれていますが、このように静人を純粋善として描き切ってしまってもよかったかもしれませんが、この作品内ではそのような扱いも受けていません。

 

静人は最後、倖世と『人間宣言』かのようにセックスをしてしまいます。
超然とした存在ではなく、長いこと一緒にいたから好きになってしまった、、、と。
(しかし、悪く言いたくないですが、このシーン大失敗ではないでしょうか。倖世に対しても「あれ?また妙な男に流れで抱かれちゃうの?」と思ってしまいました。)

 

最後に、静人は完全に記憶装置として機械的なものとして機能させるという方法。

 

静人という人間はただただ記憶するだけの人間で、思い悩むこともなにもなく。

 

この作品ではこれが一番近いかもしれません。静人という人間は一種のハードディスクとして記憶のみする存在。

 

ただ、それでも「バックアップないよね?それは?」という観客(僕)の疑問は消えないかもしれないですが・・・。

 

 

FaceBookと死を悼むこと

死を記憶する、ということが暗黙の前提で善として了解されているのなら、静人が全国をまわり一人心に死を記憶するよりも、恐らくFaceBookに生活をアップロードするほうが余程悼みとしては良いものになってしまいそうだと思われます。

 

なぜならそこでは半永久的に生前の記憶が保存され、第三者がアクセス可能で、友人は思い出を語り合うことができる、、、。

 

本当にそうでしょうか?静人よりFaceBookのほうが死を悼む行為に近いのでしょうか?

 

僕には実はそうは思えないのですが、それが何なのかはよくわかりません。

 

本当は静人にそういうことも考えながら旅をして欲しかった、というのが僕の感想です。

 

ちなみに映画としては、静人をはじめ役者の方々の演技は(一部を除き)素晴らしかったです。

 

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