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アイ・イン・ザ・スカイ〜世界一安全な戦争〜の評価

 

 

 

 

映画,アイ・イン・ザ・スカイ,ネタバレ,感想,評価,批評

 

映画、アイ・イン・ザ・スカイを観てきました!
ハリーポッターの真の英雄、スネイプ先生役でお馴染みのアラン・リックマンの遺作ともなった今作。
個人的にドローンならびに最新テクノロジーが戦争に与える影響が如何ほどのものか知りたいという思いもあり、観にいったわけですが、、、

 

ドローンをはじめとする最新テクノロジーがいかに戦争に影響を与えたのか? というドキュメンタリー視点での興味を満たそうとすると強烈な肩透かしを食らいます。

 

その意味で僕が勝手な期待をしていたということもありますが、正直にいってこの作品はちょっと辛い。
なぜそう言えるのか? を、ネタバレありで構造に踏み込みながら、感想・批評・評価を述べていきたいと思います。

◎アイ・イン・ザ・スカイの物語の骨格はサスペンス

物語の骨格を取り出すと、アイ・イン・ザ・スカイという映画の本質は、『複数の命を救う為にひとりの無辜の命を犠牲にするのか?しないのか? というギリギリの決断を迫られる軍事サスペンス映画』※ ということができます。
※(どちらに話が転ぶかわからないという『ドキドキ』が魅力となるお話)

 

アイ・イン・ザ・スカイは物語の要所要所で、この決断を簡単には下せない状況※を見せ、そのことによって観客に『ハラハラドキドキ』を味あわせる作りになっている。
※政治的要素や兵士による命令拒否などですね

 

話の骨格そのものを取り出すと、この映画は戦争ものというよりは、実は普遍的な倫理への問いかけを含んだサスペンスものであると言った方が相応しい。

◎アイ・イン・ザ・スカイのオリジナリティはどこにあるか?

映画,アイ・イン・ザ・スカイ,ネタバレ,感想,評価,批評

 

ではアイ・イン・ザ・スカイの独自性はいったいどこにあるかというと、『戦争中でもドローンによって政治密室劇(サスペンス)が現場でリアルタイムに成立するようになった』ことを見せようとした点にあります。

 

本来的には昔からある『犯人を射殺していいか迷う現場の刑事』などと変わらない状況が、通信技術その他の発達によって政治的議論が現場にダイレクトに割り込んでくる。(割り込めるようになった)
そうした状況の描写こそが、この作品のオリジナルなポイントになります。

◎アイ・イン・ザ・スカイの評価すべきポイントは?

逆に言えばこの作品の成否をわけるポイントは、古来からある倫理的・普遍的な問いかけ『そのもの』にはありません。

 

この倫理的な問いかけ(皆のためにひとりを犠牲にしていいのか?)が、紛争の現場にリアルタイムに持ち込まれることによって一体何か起きるのか?を、いかにリアルに描けるか、が重要になります。

 

ここに失敗するとアイ・イン・ザ・スカイのオリジナリティ(『現代の戦争の実態』)そのものが単なるトンデモに見えてしまって全部オジャンになる、ということでもあります。

 

その意味でこの作品の成否はとりわけ以下2点のリアリティをいかに質高く描写できるか、に左右されます。

 

@『紛争の現場と政治の現場を直結させるテクノロジーのリアリティ』
A『各現場で発生する葛藤のリアリティ』

◎アイ・イン・ザ・スカイの評価結果は?

正直に言えば、テクノロジー描写も葛藤の描写も、いずれもリアリティに欠けていたといわざるをえません。
というかそもそも作り手側にリアリティを追求する意思がほとんどない。

 

なぜそう言えるか?

◎ドローンをはじめとしたテクノロジー描写のリアリティのなさ

本作の最大の特徴にして売りであるドローンの描写。
これがまずリアリティに欠ける。

 

例えば黄金虫サイズのドローンが(少し前に発売された)プレイステーション一体型携帯によって操作され、リアルタイムで犯行現場に潜入するわけですが、さすがにこのサイズのドローンがあれだけの超高解像度の映像を遅延なく長時間に渡って飛行を繰り返しながら送受信するのは無理がある。
映像的にもバッテリー的にも無線通信的に相当苦しい。

 

確かにあのサイズのドローンも存在はするがとても映画に登場するレベルで実用できるものではありません。

 

あるいは空撮からターゲットの顔が判別できるレベルでまでスーパーズームされる。
巨大ドローンも空中で静止できるわけではないから、長時間の定点観測はそもそもできないはずですが、そんなこともお構いなしです。

 

最大の売りであるはずのドローン描写が、『現代の最新技術』でなく、単なる『スパイの秘密道具』的描写になってしまっている。

 

本来なら『ここまでできるのか!』という驚きが観客にとっての楽しみでもあるのですが、ここが正直に言って雑に過ぎる。

 

要は、作り手側の『ドローンっていう最近話題のアイテムを使っていれば現代風に見えるでしょ?』という怠慢な態度が画面のあちこちにありありなわけです。

 

 

現代のドローンに何がどこまでできて、何がどこまでできないのかを真剣に考えた上での描写では到底ない。
リアリティの追求など全くされていない。
そのため、この作品の売りのひとつでありえた『現代の戦争の”実態”』描写が全く信頼できなくなる。

 

これは一昔前の『スーパーハッカーが数分キーボードを叩けば何でもできちゃう』式描写と構図としては同じです。
もちろんそういう設定と割り切ってみてください、というような娯楽スパイ映画とかなら全く問題ないですし、それも楽しくはあるのですが、少なくともアイ・イン・ザ・スカイはシリアスものですし、物語の根幹部分のリアリティに関わる要素ですので、これではちょっと苦しいと言わざるを得ない。

 

 

さらに言えば例えば走る車のサイドミラーに何も写らないまま進んだり、と、そもそも作り手側がリアリティに重きを置いているとはとても思えない描写が繰り返されます。

 

◎現場の葛藤のリアリティのなさ

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こうしたリアリティの欠如は現場の葛藤シーンにも多々見受けられてしまう。
その最たるものがミサイル発射を現場の兵士が拒否するシーンでしょう。

 

現場の兵士と大佐の立場・力の差となると、部長とヒラどころではありません。
命令違反が厳罰にもなるゴリゴリの縦社会でもある軍隊の中で、数年越しのプロジェクトの成否を決定する上司の判断をヒラが突然拒否できるわけがない。
(むしろそれが頻発するような組織であればその方が本来的には恐怖です)

 

作り手側がミサイル発射をできない理由を無理やり作っているようにしか見えない。
(リアリティにかけるため、共感してハラハラできない)

 

 

その後も『今爆撃しなければ市場で自爆テロをされる。早く爆撃を!』というシーンが追加されますが、このあたりもピンとこない。
自爆テロ犯(候補)は超高性能ドローンによって顔も姿もばっちり事前に分かっているわけだから、市場に向かう途中で何らか対策できちゃいます。

 

 

そもそもサスペンス要素が盛り上がるためには、

 

『AとBのいずれかを選ぶしかもう道がない!』という

 

登場人物達の追い込まれた姿に観客が『確かにそうだ、でもどうするんだろう?』と共感できるように描写する必要があります。

 

 

しかし、ことこの作品においては、ただ単に登場人物たちの視野が勝手に0:100の決断しかないと思い込み事態をややこしくしているようにしか見えない。

 

さらにテンポも決して良くはない。

 

そのため、結果的に登場人物のハラハラと観客(僕)のハラハラとが著しく乖離してしまうことになります。

◎まとめ

ドローンという最新テクノロジーによって戦争の現場と政治の現場とが直結する。
そのことによって新たな密室サスペンスと倫理への問いかけが生まれるという企画自体は面白そうではありました。

 

しかし、肝心のテクノロジー描写も葛藤の描写があまりにゆるく、作品全体の質は高くはなくなってしまった、というのが僕の意見です。

 

女の子のフラフープのシーンとか良かったんですけどね。

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