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ベイマックスの映画評<★★★☆☆>

 

こんにちは。

 

ベイマックスがアカデミー賞を受賞したというニュースを見たのを機に、せっかくならと劇場まで見に行ってきました。

 

ベイマックスは、アナと雪の女王の記録的大ヒットの後に公開されるも、「これはスゴイ!」と大絶賛されていた印象でしたので、「どんな風にスゴイのだろう?」という先入観を持って見に行っていました。

 

結果的には、あまりこういう事をいうのもなんですが、「高品質なファミリーレストランのハンバーグ」のような作品だったなぁ、というのが僕の感想です。

 

親子で安心して鑑賞できる。物語的にワルい要素は一切なし。
テンポよくすすむ、驚異の高クオリティ映像。
可愛らしいマスコットキャラ。
破綻なく、器用にまとまったストーリー。
そして、全く滲み出ない作家性……。

 

 

あらすじ

さて、<<あらすじ>>です。

 

舞台は架空の未来都市、サンフランソウキョー。
ロボット製作の天才、ヒロ・ハマダ少年は幼い頃に両親を失い、叔母と兄のタダシと暮らしていた。
彼は今日もその輝く才能を違法なロボットバトルに浪費していた。

 

兄のタダシは、そんなヒロをさまざまなトラブルから守りながら、自身が学ぶロボット学の大学研究室へと連れていく。

 

ヒロは、そこで個性豊かなタダシの親友と出会いながら、広く、新しいロボット学の魅力に魅了され、タダシと同じ大学に入学を志すようになる。

 

やがてヒロはその才能を遺憾なく発揮し、大学への入学許可を得るものの、不慮の事故により最愛の兄、タダシを失ってしまう。

 

そんな深く傷ついたヒロを癒すため現れたのが、生前タダシが作っていたケア・ロボット、ベイマックス。

 

ヒロはベイマックスとの友情を育むうちに心の傷を癒していくが、兄を失った事故が単なる事故ではなく、その裏に隠された事件があったことを知る。

 

ヒロは、ベイマックスと共に事件の真相を突き止めるため、サンフランソウキョーの町を駆け巡り始める……。

ベイマックスと上手い漫才の共通点<ネタバレあり>

さて、ベイマックス。これまでの映画評では構造的な分析、物語の中の対比要素の視覚化とかをしてきたのですが、、、ベイマックスについては、特に言うことがありません。

 

というのも物凄くシンプルで、話の筋としてはもう見たまんま、という映画だからです。

 

ですので、ここでは構造的な話ではなく、この映画の「テンポの良さ」について触れてみたいと思います。

 

この作品、見ていただいた方はわかるかと思いますが、とにかくテンポが素晴らしかった

 

どのシーンもセリフも、基本的にはワン・ツー、ワン・ツーと矢継ぎ早にシーンが切り替わり、観客に「このシーン長いな」と思わせる瞬間がありません。

 

普通は、例えばヒロが真犯人に思い至るまでの推理シーンなどは、もう少しゆっくりなるものが多いように思います。

 

が、ベイマックスでは、ヒロはあれよあれよと言う間に「XXが真犯人だ、捕まえに行こう!」となります。

 

思い悩むことも迷うシーンもほとんどない。迷ったとしても、シーン全体としてはテンポよく刈り込まれすっきりしている。

 

このテンポ、漫才が好きな方にしか伝わらないかもしれませんが、いい漫才のリズム・テンポとかなりな程度似通っているように思われました。

 

漫才でもネタ(ボケ)の中身云々ではなく、掛け合いのリズムの良さに上手い・下手が出るものですが、その意味でベイマックスという作品、「物凄く練習したんだなというのがわかる漫才」と非常に似ているように思われます。

 

シーンとシーン、セリフとセリフに無駄や遊びがなく、全てが次のシーンに繋がるためのものとして刈り込み、詰め込まれており、あっという間に場面転換がなされていきます。

 

上手い漫才でもボケとボケが重なり、リズムが速くなり、前のボケを受けて次のボケが発展する、そんな感じです。

 

適切な例か自信はないですが、NONSTYLEの漫才の後半部分とセリフやシーンのテンポはほぼ一緒ではないでしょうか?

 

今は、youtubeにしろ何にしろ隙間時間の消費に消費者側が慣れきっているので、これから腰を落ち着けてみる形式の作品、映画や本もこんな風に徹底的にリズムよく刈り込まれることが大切になるかもしれません。

 

 

 

 

素晴らしく、そして量産可能な規格品

そして、皮肉なことにといいますか、ベイマックス、テンポは素晴らしいのですが、肝心のボケ(中身)は見たことのある話ばかりで意外性がなく、どうにも僕には「目に見えて手を入れることができる範囲は最高にブラッシュアップした努力賞」というように見えてしまいます。

 

出てくるキャラ(ベイマックス除く)もセリフもジョークも全て、これまで見たことがある造形ばかりで、なんというか、突き抜けた作家性というものはなく教科書通りで、まるで全員が反対はしない内容、というコンセプトでもあったかのように思えます。

 

子供向映画なので何を言っているんだと自分でも思いはするのですが、要はこの作品、「量産可能な規格品」に思えてしまうのです。

 

つまり、この作家にしかない味だなぁとか、そういうのがない。

 

今後も、「話の筋としては普通だけど、CGのクオリティとテンポの良さ」で、大人数で作品を量産していくのだろうなぁと。

 

個人的にどうしてもピクサーが関わる作品には、大傑作トイ・ストーリーシリーズで味わった感動と興奮をもう一度と意気込んでしまうので、求めるハードルも無駄に高ければ、要求する種類も異なってしまっているかもしれません。

 

ただ、努力で磨ける部分といった点は本当に徹底的にブラッシュアップしている、とは思いました。

 

特にCGは、もうこんなレベルに達しているのか、と驚くばかりです。

 

個人的には、これからのビッグヒーロー6の活躍をより見たいなぁと思いました。

日本版と本国版のラストシーンの違い

最後に、本国版と日本公開版とでラストシーンが異なっていることを皆さんご存知でしょうか?

 

ラスト、ヒロがベイマックス、ワサビ達と一緒にヒーローの姿で画面に映ります。

 

その後、「これからも人々を助け続ける、ベイマックスと一緒に!」的なセリフの後に、「ベイマックス」のロゴが表示されるのですが、実はこのラストシーン、本国版と異なっているのです。
(吹替版も字幕版も違いはなく、米国版と異なっている)

 

本国版では、「ベイマックスと一緒に!」というセリフではなく、次のようになっています。

 

「これからも人々を助け続ける」
「僕たちは誰かって?」
ビッグヒーロー6(本国版のタイトル)のロゴが出る。

 

ここまで相違が出てしまったのは、日本のプロモーション戦略が理由だと考えられています。

 

もともとはアメリカンコミックヒーローを原作とした今作。

 

本国ではアメリカンコミックヒーローとディズニーという異なるテイストのコラボ、というのが見所だったようですが、日本ではそもそもアメコミというのがマイナーですので、「暖かく優しいハートウォーミングキャラクターもの」で売り出そう、となったのでしょう。

 

そう考えるとエンディング曲のアメリカン版のフォールアウトボーイズのいかにもなロックとAIのバラードチックな曲調のギャップもうなづけそうです。

 

ちなみにビッグヒーロー6の原作でのベイマックスは結構凶悪な顔つきなので、興味がある人は調べてみてもよいかもですね。

 

 

 

 

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