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【アート】山本 基さんの塩のアートが物語る悼むこと、みおくること、シェアすること

 

こんにちわ。

 

昨日TV番組のスッキリ内で、山本 基さんの『塩のアート』が紹介されていて、大変に感銘を受けたので今回はこの作品が意味する葬送の物語の素晴らしさについて、わかりやすく書いてみたいと思います。

 

まずは基本情報として作品紹介をさせてください。

 

この作品の作者は山本 基(やまもと もとい)さんという方で、今から21年程前(1994年ごろ)に妹さんを病気で亡くされたことをきっかけとしてこの作成された作品とのことです。

 

作品サイズは何メートルほどもある巨大なもので、材料は全て塩で作成されています。

 

この作品は展示終了後、鑑賞者とともに作品自体が壊され、利用した塩を鑑賞者と共に海に帰すというところまでを作品として展示していたとのことです。

 

 

■作品画像

 

アート評,芸術,アート分析

 

■その他作品は山本さんオフィシャルサイトへ

 

以下にこの作品の何がそんなに素晴らしいのか、について記載をしていきたいと思います。

 

キーワードは、『海と記憶。命』です。

身近な『死』を前に言葉を亡くした時

身近なひと、それも自分の成長と分かちがたく結びつき、感情も共有していた誰かの死は、多くの場合私たちを強く打ちのめします。

 

恋人であれ、親であれ、友人であれ子どもであれ。

 

そうした時私たちはいくつかの慰めの言葉をもらったり探したりしますが、そのような言葉が即物的に私たちの気持ちを慰めることは決してありません。

 

死んでしまった誰かのことを不意に思い出しては、言うべきだった言葉や共に築いた思い出を思い出し、声にならない声を出してひとしきりボンヤリする……、そんな時間を、何もできない時間を経ることでしか、そうした心は変われない。
僕はそう思っています。

 

そんな時私たちは『忘れないでおこう』と思うこともあれば『早く忘れたい』とも思う、両極端な感情に振り回されたりします。

 

ただ一つどんな振れ幅であれ身近な死を前に共通している感情は、『この想いをどうすればいいのかわからない』という”戸惑い”だと僕は思っています。

 

 

この作品は、そうした死がもたらす戸惑いや悲しみ、祈りを表現することに成功しています。

 

 

塩のアートが語る死を悼む物語

 

この巨大な作品は一見して海のようなまたは銀河のように見えるように作られています。

 

一方、作品に近付いてみるとそれは大粒の塩がまるで”シナプス(記憶の源)”のようにいくつかの小さなユニットとなり、各々が結びつけられていることに気付くかと思います。

 

 

 

ここには恐らく様々な寓意が込められています。

 

妹さんの”死”を浄化する塩を用い、全ての命が生まれ、そして死んでしまった妹さんが戻ったであろう海(のようなもの)を描く。

 

ひとつひとつの命は”記憶”で結びつき、総体として銀河のように描く。

 

寄せては返す声にならない記憶の波は海と紐づき、そして消えた命と受け止めた海が重なりあう。

 

個別の死を想い作られた作品が、死んだその誰かのことを知らぬ人同士をつなげ、見知らぬひとの手で海に帰される。

 

そしてその死を知らぬ私たちは、その海の中に抱えきれぬ命の死と記憶があることを感じ、けれど海がすべてを溶け合わせていくことを知るのです。

 

この時、個別の妹さんの死は、ひととひとを繋ぐ物語として昇華されていくことを私たちは感じることでしょう。

 

 

この作品を見ると、その奥に作者の山本さんがひとりで悲しみ途方に暮れている姿と、そこから何とか意味のある、後ろ向きでない何かをつかみ取ろうと必死でもがき生きた姿を想像せずにはいられません。

 

 

それは海の波のようにこちら側にきて、そしてあっけなくあちら側に帰ってしまう命が、いくつかの良き記憶を私たちに与えていったことを”この命が与えてくれたことは決して間違いのないことだったんだ”と必死で祈っているようにも僕には見えるのです。

 

 

 

僕は何よりも、この作品から”このようにすればうまく表現できるだろう”という作為や小賢しさではなく、”どうすればいいかわからない”という彼の切迫感とそれでも妹さんを悼みたいという想いとを何よりも感じるのです。

 

 

そして僕はそのような作品が世の中にあることに、何とも言えず励ましを受けるのです。

 

 

宮沢賢治の春と修羅:山本 基さんの海に還る

宮沢賢治の春と修羅という詩があります。

 

そこにはこんなことが書かれています。

 

『わたくしという現象は

 

 仮定された有機交流電燈の

 

 ひとつの青い照明です

 

(あらゆる透明な幽霊の複合体)

 

 風景やみんなといっしょに

 

 せわしくせわしく明滅しながら

 

 いかにもたしかにともりつづける

 

 因果交流電燈の

 

 ひとつの青い照明です

 

(ひかりはたもち、その電燈は失われ)
(後略)』

 

 

海と塩。

 

この作品は賢治の修羅の春にも通ずる悲しみと、そして過ぎていった命が決してゼロではなかったことを祈るような、そんな作品であると思います。

 

現代アートがもっとわかるために

 

 

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