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【映画評】機動戦士ガンダム THE ORIGIN 青い瞳のキャスバル 〜キャスバルが失うものとはなにか?〜 ★★★☆☆

 

こんにちは。

 

機動戦士ガンダム THE ORIGIN 青い瞳のキャスバル を、2週間限定ということもあり劇場に見に行ってきましたので、その映画評を今回はまとめておきたいと思います。

 

当文章の一部ネタバレありますので、『シャア・アズナブル』という男の悲しみに触れたい方は見ることをおススメいたします。

あらすじ

舞台は宇宙世紀0068年、サイド3、ムンゾ自治共和国。

 

人の世の革新を説く、ジオン・ズム・ダイクンはその演説の途中、突然に倒れ帰らぬひととなってしまう。

 

これをザビ家はジンバ・ラルによる暗殺と噂を流布。

 

国内は混乱。

 

一方ジンバ・ラルはザビ家による暗殺と確信。

 

ダイクンの妻、アストライア、キャスバル、アルテイシアを保護。

 

息子、ランバ・ラルに3人の保護を命ずる。

 

ランバ・ラルは3人の命を守るため奔走するのだが……。

 

後のキャスバル少年が赤い彗星シャア・アズナブルへと生まれ変わる、その第1章である。

作品の魅力@ キャスバルが背負う悲しみと輝き

もともと機動戦士ガンダムシリーズは群像劇としての性格が強く、ある特定の人間の生きざまを深く掘り下げるといった性格は薄かったように思います。

 

しかしこの作品では、キャスバルという人間の背負う業と悲しみを掘り下げていきます。

 

彼の輝きに心震えるほど、運命がもたらすその後の残酷さに心が締め付けられることは間違いありません。

 

もともとキャスバルは恵まれた容姿に加え才気煥発、卓越したパイロットとしての技術をもち、さらに部下を労わるある種の慈愛のようなものをもって生まれた人間でした。

 

しかし運命は彼を、もしかしたら人類を導くカリスマとなり得た彼をその才能に見合った人生を歩ませることを許しませんでした。

 

 

この作品のオープニングは、1年戦争にてジオン公国が新技術『モビルスーツ』によって連邦軍を完膚なきにまで叩きのめすあの『ルウム戦役』から始まります。

 

艦隊対艦隊の戦いでは不利と思われたジオン軍のもとに、まさに彗星のごとくあらわれ次々に連邦軍の戦艦を沈めるその姿は救世主のようでもあり、英雄のようでもあり、『シャア』のファンであれば痺れること間違いありません。

 

艦隊戦でシャアがあらわれる瞬間の血が沸くような興奮といったらたまりません!

 

お好きでない方もおられるかもですが、新世紀エヴァンゲリオンQのオープニングでアスカの2号機がお馴染みの戦闘テーマのドラムの音と共に回転を始めたあの瞬間に似た、思わず声をあげてしまいそうになる昂りによく似ています。

 

 

いわゆる機動戦士ガンダムで語られるシャアは、先のルウム戦役――彼が伝説となった戦い――以降のお話となっているため、当初圧倒的であったシャアが超人アムロ・レイに敗れいくキャラクターとしての印象がどうしても強くなってしまっています。

 

その印象はZガンダムであっても逆襲のシャアであっても同様で、基本的にシャア(キャスバル)という男は、UC0080以降、『敗れ去る男』であったのです。

 

 

しかし、どうでしょう。

 

この作品では彼が英雄としてまばゆいばかりの輝きを放ちます。

 

しかし彼は母に愛されることをもっとも望んでもいい年頃に、愛されることよりも守ることを余儀なくされ、そしてそれすら果たせず、”大人”と”政治”に打ちのめされるのです。

 

彼がその才能をルウム戦役でみせればみせるほど、その姿が輝くほど、僕としては悲しみを覚えずにはいられませんでした。

 

言い換えればこの作品は、何もかもNo.1であり得た男がその全てを自らの才能の限界と運命により、失い始めるその端緒を描いた作品である、ともいえるかもしれません。

 

一部ではロリコン的な扱われ方をしているようですが、彼の育った運命に想いを馳せると、そこに回復不可能な震えた心とそれを必死に保とうとした誇り、そして決して消えぬ復讐心がとが混じり合っていたことを知ることになるでしょう。

作品の魅力A 英雄たちの前日譚

この作品では、先にも触れましたが多くの1年戦争を彩る英雄達の前日譚を垣間見ることができます。

 

これまでゲーム作品等で黒い三連星(三連戦ではないですね)が連邦軍大将レビルを捕縛する瞬間の映像や、若き日のキシリアやドズル。

 

ジンバ・ラルの人格を知ること、ランバ・ラルの若き日の活躍等は、ファンであればたまらないものがあるのではないでしょうか?

 

僕は実はガンダムの根強いファンの方に比べると全然詳しくないので、今回初めて知った重要なキャラクターも複数いました。
(初出なのかOVA等にでていたのかよくわからなかったのです)

 

この作品の残念なところ 演出がアニメ・アニメし過ぎている+声があっていない

これは僕の個人的な趣味なのでそっくりそのまま長所として受け取るひともいるとは思いますが、ストーリーの端々に萌えや笑いによる脱力が挟まりすぎ、「そうじゃないんだ」と上映中に呟いてしまいました……。

 

僕としてはもう少し、ハードコアでオールドファッションな、すこしダサいくらいの作品を望んでいたので、少し興ざめしたのは間違いありません。

 

また、上記とほぼ重なるのですが、声優陣も少しアニメ声し過ぎていて僕にはついていけないところがありました……。

 

ガンダムの魅力のひとつに「えっ?ブライトってあれで19歳?!」みたいな、戦前の日本人を見るような現代とかけ離れた成熟の早さがあったので、どうにも声がアニメチックで子供子供しているシーンがあると、、、というところです。

 

 

もともとの安彦和良さんの原作が、ちょいちょいと脱力するシーンを挟みがちなもので、それが原作の魅力のひとつになっているのは間違いのですが、アニメ的演出で間延びしてやられるとちょっとなぁ、、、と。

 

残念なところA ほんと?というシーンがいくつか

”ガチ”のオタクではないので、僕が間違っているかもですが、いくつか気になるシーンがあり。

 

○ムンゾ共和国の夜空に星が光っていたこと

 

もともとのコロニーの構造を考えると、ある家の上空は本来は別の民家が張り付いているかっこうになっている認識でした。
(筒の内側に家が張り付いているイメージ)

 

なので、夜空に星が輝いていたのは”あれっ?”となりました。これまでそんな演出あったでしょうか??

 

 

○ガンタンク初期型の存在

 

これが正史だ!と言われれば納得するしかないのですが、今回の映画=1年戦争前に連邦軍の統治手段としてガンタンク初期型が複数配備されていたことです。

 

もともとモビルスーツはジオン軍のオリジナルという認識ですが、これだと連邦内ですでにその萌芽があったことになってしまいます。

 

もともと連邦内でモビルスーツ的なものの試作があったとしても、そうなるとRX−76(いわゆるガンタンク)がRX−78(ガンダム)と同じ工場で作られていたことに納得できません。

 

なぜなら連邦軍ないですでにガンタンク初期型が量産配備可能なほど技術ストックがされていたら、あのタイミングでわざわざ既知の機体を作るとは思えないので。

 

うーん、、、そういうものなのでしょうか??

 

物凄くニワカなことを言っていたら申し訳ないです……。小説やその他で補完されているのでしょうか??

 

 

 

 

 

総評として

総評としては、若干アニメアニメし過ぎているところは気になるものの、一シャア・アズナブルファンとしては、見ないわけにはいかない、といったところでしょうか?

 

しかし、ガンダムはスゴイですね。

 

これからも、映像表現の力が増すごとに、『今の技術でガンダムを描いたら』となることは間違いないでしょう。

 

いやー、凄いコンテンツです。

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