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【映画評】キングコングとアメリカの精神の考察

【映画】キング・コングとアメリカの精神を考察する

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ド迫力の予告映像を観て以来、次行くならコレだなと思っていたキングコング。
いやー、面白かったですね!
何度も笑っちゃいました。
いい意味でB級ものに違いない、と思いきや、そうではなさそうに見せかけ、やっぱりちゃんとそうだった、という、いい意味でこちらの期待を裏切らない(裏切る)素晴らしい出来でした。

 

一応映画の構造やアメリカの精神といった要素を含めて、この映画を考察しようとは思いますが、しかし本質的にはそういうことをするのは自分でも野暮だなぁとは思いますね。

 

なにしろ『この島で、人類は最弱。』なわけです。(素晴らしいコピー!)
怪獣達に黙っておののくのが吉ではあります。
しかしそれでもちょっと語りたくなるところが、またこの映画のいいところだとも思います。

 

それでは早速、物語の構造を分析した後に、中身に少しだけ踏み込んで考察してみたいと思います。

◎キングコングの物語の骨格と構造

◎物語の骨格

 

キングコングの物語の骨格を『思い切り』削りだすと、モンスターパニック+スーパーヒーロー映画だといえます。

 

モンスターパニックとは、閉鎖空間に閉じ込められた人間がモンスターに襲われながら脱出を目指すハラハラものですね。大体『いらんことしぃ』のメンバーが何かやらかしちゃう。で、やられちゃう。

 

 

スーパーヒーローとは、圧倒的な力をもつヒーローが凡庸な人間に足を引っ張られつつも、その力を発揮し、最終的には大きな目的を達成する、というものです。
こいつら俺らのヒーローの足ひっぱるなよぉ!的鑑賞が楽しい系ですね。

 

で。

 

映画キングコングは、大きく以下3つに分かれたパートの中で、スッと物語のジャンルがモンスターパニックからスーパーヒーローものに綺麗に切り替わります。

 

 

◎物語の構造

 

@モンスターパニック編

・人間パート
髑髏島に潜入し、閉鎖空間のなかで脱出が困難になる。

 

・人間vs怪獣
次々にモンスターが襲いかかり、犠牲がでる中、脱出を目指す。この時はコングもモンスター側で描写されています。物語の主役はあくまでこの時点では人間です。
モンスターパニック好きな人的には一番盛り上がるところですね。
次から次に奇想天外なクリーチャーが現れ、人間がぶっ飛ばされる。
ハラハラしながらも、いいぞ、もっとやれ、みたいな歪んだ気持ちになるシーンでもあります。

 

 

Aスーパーヒーロー編

・コングvs怪獣
コングが人間を守るためにスカルクローラーと闘うにいたって、コングは完全にモンスターからスーパーヒーローへとその役割を変えます。
コングはスーパーパワーを発揮し、−−時にサミュエル・エル・エル・エル・ジャクソネルに足を引っ張られても−−、怪獣を倒し、人間を守ります。

 

いわゆる怪獣プロレスものの本懐ですね。
コングでけー!みたいな。
負けるなー!みたいな。
ジャイアント馬場を応援する小学生男子みたいな気持ちになれるシーンです。
(したことないけど)

 

そうしてコングは勝利し、人間は閉鎖空間から無事に脱出し、物語は終わりを迎えます。
(エンドロール後のお楽しみを残しつつ)

 

 

主役がスッと人間からコングに切り替わることで物語のジャンル自体が実は切り替わっているのですが、このあたりのスムースさは実に見事でしたね。

◎考察の前に『監督による『最近の映画は深刻すぎるんだよ』発言』

さて、この映画。
予算の桁が違うのか、その本質としての(いい意味での)B級感に比して特に髑髏島潜入までの画面の『ヒリツキ』具合とブラックユーモア感が半端ではありません。
バリバリとカットが切り替わり、グラムでサイケなロックが流れ、何か現代的な神話の予感を感じさせる。
特に日本では昨年(2016年)に、歴史的超傑作にして新たな神話となった『シン・ゴジラ』の例がありますから、期待はいやがうえにも高まります。

 

シン・ゴジラのレビューはこちら
【映画評】シン・ゴジラと初代ゴジラの共通点と相違点がわかる
【映画評】泣きながら殺せ!と叫ぶ傑作 『シン・ゴジラ』 ★★★★★

 

 

そして実は怪獣と神話・国家というような視点でみれば実はかなり色々と考察できるポイントがある。
しかし、先ほどにもご紹介したパートB怪獣プロセスに切り替わる直前から、キングコングは、『うるせー、こまけぇこたぁーいいんだよ、ウほー!』みたいなテンションへと変わります。

 

なので、僕としても『まぁいいか、ウほー!』みたいに鑑賞することにしました。

 

監督自身が『最近の映画は深刻すぎるんだよ!ノー、ノー、でっかい怪獣が闘うのっていいじゃん?な?』みたいなことをインタビューで明言していたので、このウホー感は明確に意図をもってやられてはいます。
しかし、それでもやはり序盤については、図らずも神話的要素がどうしても滲んでしまっている。(良い意味で)

 

さて、それではあえてキングコングを『やや』深読みして考察するとどんな物語が見えてくるのでしょうか?

◎アメリカの精神としてのキングコング

いきなり話がでかくなりますが、アメリカの最初の『偉大な小説』としてよく取り上げられる作品に『ハックルベリーフィンの冒険』という小説があります。
児童文学として大ヒットした『トム・ソーヤーの冒険』の続編にして、ノーベル文学賞作家、アーネスト・ヘミングウェイが自身の小説の中で、『アメリカ文学のはじまりにして最も偉大な小説である』とド級の賛辞を送っている作品でもあります。

 

浮浪児にして自由人である少年ハックが黒人逃亡奴隷のジムと共にイカダに乗って自由を求めて川を下る。

 

この作品を読み解く際によく語られるキーワードが、『自然対文明』という考えです。

 

 

そもそもアメリカという国家は自然とともに暮らすインディアンを追い払うように、東からひたすら未開の西へと切り開くことでできあがったという歴史があります。

 

彼らにとって『自然』とは常に『征服されるべきもの』であると同時に、『未開拓=可能性』の象徴でもありました。
しかしその一方で、開拓が進むにつれ、『文明』が誤っているのではないか、という疑念がついてまわるようになります。
文明により心も街も破壊される。自然に帰りたいと願うようになる。
しかし、厳しい自然の中で生きていくことは本当にはできないことも知っている。
そのようなジレンマを抱えて、国が育っていった、

 

つまり、『文明化(自然破壊)自体がアイデンティティあるのを知りながらも、自然に戻りたいという想いを抱かざるを得ない。そしてそれは決して叶わない』という精神構造をもった国だった、というわけです。

 

 

◎自然からつれてこられた初代キングコング

 

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そのような『自然対文明』という視点に立ったとき、実は1933年公開の初代キングコングはまさに自然側の被害者という側面をもっていました。
未だ未知の存在であった髑髏島の王であった彼(初代キングコング)は、ブロンド美女に恋をし、そのために都会へと連れ帰られてしまう。
コングは彼女を守ろうと暴れはするものの人間の手によって殺されます。
初代キングコングにおいては、未知の自然(野蛮人)は米国的美に種を超えて恋をして(憧れ)、そうして人間(アメリカ人)の手によって征服されてしまうわけです。

 

 

言い方は非常に悪いかもしれませんが、しかしある意味でまさしく『ウィーアーアメリカン』な精神があるわけです。

 

◎自然に迷い込んだ、人類は最弱

 

一方今作では未知を征服しに来た人間はあくまで自然から追い返されます。
それどころか、自然の王によって様々な危害から保護されて帰っていく。
今作でコングは美女に盲目的に恋することはありません。
友情を感じながらもあくまでそこには一定の線が引かれる。
恋のためではなく、あまねく命を守るためにコングは力を振るうわけです。

 

その意味で今作では、自然はあくまでも神的なものであり敬意を払うべきものであるように描かれます。米国美人にお熱にもならない。
ちょっと風向きが変わっているわけです。

 

 

◎アメリカンパワーが余計なことばかりする

 

そうした風向き(ウィーアーアメリカン精神)の変化は、本作における戦争や科学の描き方を通じても垣間見ることができます。

 

いわゆる余計なことしちゃう枠として物語のしょっぱなは科学者が事態をガンガンややこしくさせる。
空爆して事態が最悪になる。
その後は軍人がコングにちょっかい出して、ややしくしちゃう。

 

つまり本作のキングコングでは、アメリカの二大お家芸、科学と軍事とが共に自然にちょっかいだして、コングを『ふんとにもー!』状態にしちゃうお話でもあるわけです。

 

だけどコングはそいつらも守る度量がある。
つくづくイケゴリです。

 

ただ日本ではゴジラという災害・災厄の象徴が全身を怒りでわななかせながら人という人をぶち殺しまくるのに比して、キングコングではあくまで圧倒的なパワーをもつ存在が世界の庇護者として描かれるあたりに、日本とアメリカの自然や災厄、あるいは圧倒的な力と人々との関係の差異を見出すこともできるかもしれません。

 

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◎まぁいいじゃん怪獣がでるんだからさ、精神

とまぁ、色々とここをきっかけに深読みも考察もそれこそ無限にできますし、それはそれで僕は楽しかったです。
この他にも紛争にやたらと首をつっこんで事態を悪化させるアメリカへの自己批判的描写だったりがあり、『む、む』と思うことも多々あります。
なるほどな、と。

 

しかし、正直に言って今この映画を見終えて感じていることは、『まぁいいじゃん、怪獣見ようぜ?』的なフランクな喜びです。
ポップコーン片手に、いけー!コング・カッター!とか叫びながらチェーンを投げるコングを応援したい。

 

それが最弱たる人類がこの島でできる唯一の行動なのですから。

 

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