金利の違い

この映画のココがスゴい!

映画をネタバレありで物語の構造に手を突っ込みながら解説したり、批評したり、分析したりしつつ感想を述べてます

 

映画,ムーンライト,フアン,キューバ,考察,

 

 

前回の続きです。

 

【映画評】ムーンライトを理解するための3つのキーワード@

 

今回は、ムーンライトの物語の構造を前回の3つのキーワードと絡めながら、解説をしていくと共に、なぜフアンはリトルに優しかったのか? なぜ母親はリトルに冷たくしたのか? なぜシャロンはひとりで闘いを挑んのか? について、キューバ移民の歴史を踏まえながら考察をしていきたいと思います。

 

 

◎物語の骨格

 

映画ムーンライトの物語の骨格をいつものように『思い切り』削りだして(神話等と同等のレベルで)抽象化をすると、大きくは以下のようになります。

 

『周囲と異なる子ども(異形の子)が周囲から拒絶され、傷つきながらも成長し、やがて共同体からはぐれていく。しかし時を経て、拒絶した人々と再会し関係性を回復していく中で、彼自身もつかの間の安らぎを得る』

 

 

『黒人のLGBTによる恋愛』という一種『現代的で刺激的な要素』を除けば、ムーンライトという物語は実は意外なほどに『みにくいアヒルの子』という童話に類似していることに気づく方もおられるかもしれません。

 

※念のため、『みにくいアヒルの子』のあらすじを紹介するとこんな感じです。

 

『アヒルの群の中で、他のアヒルと異なった姿のひなが生まれた。アヒルの親は、七面鳥のひなかもしれないと思う。周りのアヒルから、あまりに辛く当たられることに耐えられなくなったひな鳥は家族の元から逃げ出すが、他の群れでもやはり醜いといじめられながら一冬を過ごす。生きることに疲れ切ったひな鳥は、殺してもらおうと白鳥の住む水地に行く。しかし、いつの間にか大人になっていたひな鳥はそこで初めて、自分はアヒルではなく美しい白鳥であったことに気付く。』

 

 

美しく実に繊細で胸に迫る恋愛描写がありつつも、ムーンライトの物語の骨格はあくまで『集団から排斥された異形の子の生涯』とでも言うべきものなわけです。

 

※一応誤解のないように以下2点は強調しておきたいと思います。

 

・僕自身はLGBTという要素を『異形』だと全く思っていません。(詳しくは前回記事を参照ください)
・似ている話があるから『パクリだ!』とか言いたいわけではなく、あくまでその作品の独自性を味わうために物語の骨格レベルから分析を試みているというだけです。

 

 

さて、ではこのような物語の骨格の中で、ムーンライトという物語はどのような構成でそのお話を表現しようとしているのでしょうか?

続きを読む≫ 2017/04/14 00:26:14

映画,ムーンライト,批評,ネタバレ,考察,感想

 

※ネタバレあります!

 

 

ラ・ラ・ランドを抑えてのアカデミー賞作品賞受賞ということでも注目を浴びていた『ムーン・ライト』。
公開初日に早速行ってきましたが、正直に言ってこの映画を語るのは非常に難しい。

 

というのもLGBT問題を取り扱った作品の『周辺』には、どうしてもある種の政治性がついてまわるからです。
より正確に言えば、無自覚な差別意識に基づいたLGBT嫌悪が作品の質とは無関係に表明されたり、あるいは自らの政治的正しさを演出するためのアイテムとしてLGBT作品を賞賛したりといったことがある。(と感じる)

 

恐らく多くの映画ファンとは気持ちを共有できるとは思うのだけれど、正直に言えばLGBT『だから良い』とか、LGBT『だからダメ』だとか、できればそういう所から『離れて』作品を楽しみたい、という想いがある。

 

まず誤解のないように先に自分の立場を明言しておくと、僕自身はLGBTに『限らず』、自分自身の与えられた魂が伸びたいと思う方向に自らを育んでいける社会であって欲しいし、自分もそうありたいし、周囲の人にもそうあって欲しい。

 

そしてまた、与えられた魂の形は自分で選べるものとは限らないとも思っている。
どうしようもない。
もし全てが努力や志で変えられるものなのであれば、恐らくこの世の悩みのほとんどはなくなるだろうとも思う。
背の高さ。頭の良さ。時代。肌の色。病気。家族。etc/etc

 

そうした『変えようのないモノ』を理由に僕自身が何事かを排斥しようするのであれば、それはそのまま全く同じ理由によって僕自身が排斥されることになるとも考えている。

 

『お前不細工でバカな日本人の男なんだろ?背も高くねーし。オメー幸せになる資格ないから』
そう言われても困る。
ほっといて欲しい。

 

 

とにかく僕は、政治性から離れてこの作品の核に触れたいと考えていたのだ。

 

そしてこういう長ったらしい前置きの後で改めて言うと、作品を鑑賞してからあぁだこうだ考えたあげく、出した結論は、『ムーンライトの本質はLGBTという点にはない』、というものだった。
また同時にムーン・ライトの本質は、『(LGBTに関わらず)純粋な恋愛の姿』にもない。

 

はっきり言えばこの作品の本質は『LGBTの恋愛ではない』と僕は思う。

 

この作品の本質となるキーワードは3つ。

 

それは

 

@ダブルマイノリティ
Aコミュニティ不在
Bロールモデル不在

 

である。

 

そして、『ムーンライト』という物語の本質は、上記3つを背景とした『自我の確立に挫折『せざるを得ない』人間の姿と、その傷が回復しかかる一瞬の美しさを捉えた点』にこそあると僕は思う。

 

 

僕は正直に言って、最初に観た時はそこまで心動かされなかった。
けれど色々と考えるうちに、この作品の奥底に気持ちが届いていく感触があった。

 

今回エントリーでは、なぜ最初は心動かなかったのか?
次になぜ動かされるようになったのか?
その変化について、上述した3つのキーワードを交えながら、ムーン・ライトの考察・批評・感想を述べていきたいと思います。

続きを読む≫ 2017/04/13 21:42:13

 

映画,愚行録,批評,ネタバレ,評価,感想,考察

 

映画、愚行録を観てきました!

 

いやー、面白かったですね。
監督は初長編作品だったとのことですが、ポーランドの撮影監督と協力して作り上げたという画面はそのどれもが独特に陰惨な色合いで写されており、作品のもつ内臓ごとゲッソリとさせるような雰囲気と完璧にマッチしていたように思います。
エンドロール後に劇場から出て行く皆からかもし出される『なんか・・・、こう・・・、いやー・・・・(ゲッソリ』みたいなオーラとベストマッチな陰鬱さでした。

 

中でもベストシーンはやはりオープニング早々の数分になるでしょう。
僕は物語が始まった途端に描かれる日常の描写=(悪意と善意と嘘と『ええかっこしい』とが無自覚に交じり合った、いかんともしがたい『愚かさ』とそれへの『怒り』)に、『あ、これは凄い映画かもしれない』といい意味で主人公にひいてしまった。

 

その後も映像はしばらくテンションを落とすこともなく、時にふっとホラー的表現にまで行き着いて、思わずこちらの背筋が凍りそうにもなります。

 

 

しかし、です。

 

 

最終的に観終えて、なぜか絶賛するというまでには気持ちがのりきらなかった。

 

もちろんつまらなかった!というわけではないのですが、中盤を過ぎたあたりから、物語序盤が維持していたある種の『日常=私たち自身』への自爆にも似た地続きの『怒り』とでもいうべきものが、スッと『あちら側の人々のお話』に変わってしまっている。(ように感じる)

 

 

もちろんこれは個人的な感想に過ぎません。
しかし、なぜそう思ったのだろう?
愚行録はいったいどこで物語序盤に持っていた密度の高い何かを霧散しかけてしまったのだろう?

 

何度か考えるうちに、僕なりに『あぁなるほどな』と思う答えにいたりました。

 

その答えとは、主題と物語の構造とがズレてしまっているから、です。
だからこそ、主題と映像とにズレのない映画オリジナルのシーン(オープニングとエンディング)が、胸に迫るのに比して、肝心のお話部分は少しずつ密度にムラが生まれてしまっている。

 

ではそれは具体的にどういった『ズレ』によるものなのでしょうか?

 

今回エントリーでは、映画『愚行録』のそもそものテーマと実際に描かれた姿の構造的な分析から、なぜこの話が面白くはあったけれど絶賛するまでにはなれなかったのか? その理由を解説・考察・批評していきたいと思います。

続きを読む≫ 2017/04/05 18:24:05

映画,キングコング,KINGKONG,批評,考察,ネタバレ,評価,感想

 

 

ド迫力の予告映像を観て以来、次行くならコレだなと思っていたキングコング。
いやー、面白かったですね!
何度も笑っちゃいました。
いい意味でB級ものに違いない、と思いきや、そうではなさそうに見せかけ、やっぱりちゃんとそうだった、という、いい意味でこちらの期待を裏切らない(裏切る)素晴らしい出来でした。

 

一応映画の構造やアメリカの精神といった要素を含めて、この映画を考察しようとは思いますが、しかし本質的にはそういうことをするのは自分でも野暮だなぁとは思いますね。

 

なにしろ『この島で、人類は最弱。』なわけです。(素晴らしいコピー!)
怪獣達に黙っておののくのが吉ではあります。
しかしそれでもちょっと語りたくなるところが、またこの映画のいいところだとも思います。

 

それでは早速、物語の構造を分析した後に、中身に少しだけ踏み込んで考察してみたいと思います。

続きを読む≫ 2017/04/01 13:28:01

 

映画,ひるね姫,感想,評価,批評,

 

 

映画『ひるね姫』を観てきました!

 

物語冒頭からおとぎ話の形を借りて日本の大艦巨砲主義的産業構造や労働環境への鋭い批判がなされはじめ、『これはもしかしたら見た目のポップさに反して、相当にスケールの大きな映画かもしれない!』と観はじめました。

 

しかし、序盤から中盤に差し掛かるにつれ、登場人物たちが急速に『ここはこういう設定だからツッコミはなしね!』的なルール説明セリフを頻発しはじめ、やがて僕の頭に『ん?』と『ハテナ?』が次々浮かんできてしまう。
(理由はちゃんとはあるけれど)パッと見ご都合主義的な展開が何度も登場し、正直そのたび何度もコツン・コツンとつまづいてしまう。
エンドロールががっつりと心に染みたのに比べると、どうにも本編はスッとノレずに落ち着きが悪い。

 

夢と現実の世界の細部には何かしら面白くなりそうな空気があるにもかかわらず、全体を見渡すとどうにもちぐはぐ感や無理やり感があるのが否めない。

 

なぜこうなったのでしょうか?

 

最初は僕も色々と物語の解釈・考察をしていました。こうか? ああか?
ちぐはぐ感が解消される物語のスジがすっとひけるのではないかと考えたわけです。
そして、ある時点でこのちぐはぐ感が発生してしまっている理由がハッキリとわかりました。

 

それは、物語上の重要なエピソードが何らかの理由でごっそりと削られてしまったから、です。
その結果、失われた部分をカバーするように周囲のエピソードやキャラクターが無理をせざるを得ず、物語全体の流れがギチギチと軋んでいる。
(アスリートが切れた腱を支えるために周囲の筋肉を鍛えざるを得なくなり、結果本来のしなやかさを失ってしまうのと同じことが起きている)

 

 

僕が思うに、『ひるね姫』が『本来描こうとした物語』は壮大かつ力強いものです。
特にモノヅクリに関わる人間や、夢を描こうとする人間、あるいは子供がいる方などには、物凄く響く物語であった『はず』です。

 

しかし、正直に言って現時点ではかなりの部分に『無理』がある。

 

では、削られた重要なエピソードを補完するとひるね姫はどのような物語になっていたのでしょう?

 

今回は、この『削られたエピソード』を補完することによって、この作品が本来表現しようとしていた物語の熱をこちら側で立ち上げよう、という感想・考察・批評のエントリーになります。

 

そのため、がちがちにネタばれありですのでご注意ください。

 

 

目次
1)劇場公開された版の『ひるね姫』
@物語の骨格
A映画が表現しようとした本質
B現状の問題点

 

2)削られた『ひるね姫』
@削られた物語の背景
A物語の骨格
B削られた物語が補完する要素

 

3)本当の『ひるね姫』
@物語のパートとテーマ
A立ち上がる物語

 

4)まとめ

続きを読む≫ 2017/03/27 21:45:27

 

映画,虐殺器官,ネタバレ,感想,批評,考察

 

 

夭逝した天才SF作家、伊藤計劃の小説を原作とした映画、『虐殺器官』を観てきました!
伊藤計劃自体は、本屋さんで円城塔が何かしら共同執筆している的なPOPを見て以来気にはなっていたのですが、まずは映画で親しもうと劇場へといったわけです。

 

さて、映画『虐殺器官』の感想ですが、、、開始早々の戦闘シーンの引き締まった描写を観て、「お、これはっっ!」と思いはしましたが、しかし、全体を観終えて振り返ると、うーん、、、とならざるを得なくなってしまった。

 

理由はいくつかありますが、その中でも最も大きなものはひとつ。

 

虐殺器官というエンターテイメント作品は、ワトソン役のいないシャーロック・ホームズになってしまっている、ということです。

 

この作品は、一見思弁的・哲学的な見せ方で難し気なことを語ろうとしているかに見えますが、その本質は純然たるエンターテイメントです。

 

エンターテイメントというと何か軽くみられるかもしれませんが、エンターテイメントというのは無茶苦茶に難しいことなわけです
頭に汗をかきまくらないと観客は素直には楽しんでくれません。

 

しかし、思弁的な見せ方の方が良いと考えたのかどうかはわかりませんが、虐殺器官は、本質においてエンターテイメント作品であるにもかかわらず、肝心のエンターテイメント性を犠牲にして、哲学的佇まいの方を優先させてしまっています。

 

結果的に”ガツン!”とくるものが損なわれている。

 

まずはそのことを説明するためにも、映画『虐殺器官』の物語の構造をネタばれありで解説していきたいと思いますので、未見の方はご注意ください。

 

続きを読む≫ 2017/03/25 19:54:25

 

 

 

 

映画,アイ・イン・ザ・スカイ,ネタバレ,感想,評価,批評

 

映画、アイ・イン・ザ・スカイを観てきました!
ハリーポッターの真の英雄、スネイプ先生役でお馴染みのアラン・リックマンの遺作ともなった今作。
個人的にドローンならびに最新テクノロジーが戦争に与える影響が如何ほどのものか知りたいという思いもあり、観にいったわけですが、、、

 

ドローンをはじめとする最新テクノロジーがいかに戦争に影響を与えたのか? というドキュメンタリー視点での興味を満たそうとすると強烈な肩透かしを食らいます。

 

その意味で僕が勝手な期待をしていたということもありますが、正直にいってこの作品はちょっと辛い。
なぜそう言えるのか? を、ネタバレありで構造に踏み込みながら、感想・批評・評価を述べていきたいと思います。

続きを読む≫ 2017/03/23 19:54:23

 

映画,SING,シング,感想,評価,ネタバレ,批評

 

映画、SING(シング)、観てきました!
いやー、面白かったですね。モアナと伝説の海も面白かったですが、シングも負けずと面白い。
決して完璧というわけでもないし、色々と気になる点はあります。

 

モアナと伝説の海のレビューはこちら

 

作劇の観点から観ると、決して『見事な作り』とは言えないし、特にドラマの盛り上げ方やキャラクターの部分には欠点だってある。

 

それでもこの作品が人の心を(少なくとも僕の心を)グッと揺さぶったのは、ひとえにこの作品の発するメッセージが普遍的で力強いものであることと、それを支える音楽の力が何よりしっかりとしていたからだと僕は思います。

 

ちなみに字幕、吹替と両方を見てきましたが、どちらかしか観れない、という方には個人的には吹替版をおススメしたい、と思います。

 

今回吹替は皆、歌が抜群にうまいですし、声優としての違和感もほぼありません。
ムーン役の内村さんも言われなければわからないくらい声がしっかりとムーンの声になっている。
(多分違和感があるのはジョニー役の大橋さんくらいかな。歌は抜群に上手いですけどね)

 

長澤まさみ歌うめぇな! みたいな。
齊藤さん、うめぇな! ぺっ!って言ったよね? みたいな楽しみ方は吹替版だけでしかできないですしね。
(スカーレット・ヨハンソンも良かったけど)

 

さて、それでは以下にネタばれありで、なぜこの作品は若干マズいポイントがありながらも勝利したのか?(面白かったのか?)を物語の構造に踏み込みながら、感想・批評を書いていきたいと思います。

続きを読む≫ 2017/03/22 19:51:22

 

映画、モアナと伝説の海を観てきました!
昨年度のズートピアの出来は半端じゃありませんでしたが、今回は果たしてどうだったでしょうか?

 

正直に言えば……

 

僕自身の率直な感想としては、映像や音楽は物凄いものの物語そのものは”なぜか”ピンとこなかった。

 

 

今回エントリーでは、『なぜピンとこなかったのか?』、その理由について物語や登場人物の造形にまで踏み込んで批評/解説をしてみたいと思います。

 

そして僕が観る限り、この物語で真に主役になるべきだった人物は実はモアナでもマウイでもない、”あの人”であるべきだったように思います。

 

最初はネタバレなしで本作の素晴らしいところを紹介しますが、途中からはネタバレ全開で解説をしますので、未見の方、あるいは絶賛以外の感想は観たくない!という方はブラウザバックをおススメいたします。

 

 

 

続きを読む≫ 2017/03/16 21:03:16

 

今年公開予定の映画で一番楽しみにしていた映画、『ラ・ラ・ランド(LA.LA.LAND)』。
観る度ごとに新たな発見がある。半端じゃないですね。
ラ・ラ・ランド(LA・LA・LAND)は観れば観る程、本当によくできているのがわかる。
ちょっと驚異的です。
正直にいってこの作品の凄さは一回目に観た時には絶対にわかりません。

 

 

それは、別に”ここは○○のオマージュで”式の知識先行型鑑賞が必要だからという意味ではありません。
(もちろんこの作品が過去作にオマージュを捧げているのは重要ではありますが、それは単に”ミュージカルいいよね”という意味を超えて、この作品の本質に実は深くかかわっている)
パッと見のキャッチーさに比して、この映画でチャゼル監督は無茶苦茶にハードルの高いことに挑戦している
これは詳述しますが、このレベルの緻密さと熱量とがある作品はそうそうあるものではない。

 

よくもまぁセッションから二年足らずの間にここまでのものを作れたものです。

 

信じられない。

 

セッション評はこちら
【映画評】セッション 〜ブラック企業としてフレッチャーをみたとき〜

 

 

作品の魅力をひとつひとつ数え上げればキリがありませんが、何よりも凄いと思うのは、脚本から演出、衣装、音楽、キャラクターの全てが圧倒的な緻密さによって一体化して結びつき、作品世界を形作ることに成功している点にあります。

 

”加えて”

 

それら一切合切をひっくるめて監督が

 

”夢とはなにか?”

 

”現実とはなにか?”

 

を、作品全体をもって真正面からからぶつかるように表現しているところにあります。

 

 

ひとつひとつのシーン”だけ”切りだして作品を説明しようと試みても片手落ちになる。
(あるいは特定のシーン”だけ”を取り上げて、けなしてもそれはあまり的を射ない)

 

なぜなら、あるシーンは”必ず”別のシーンとの”絡み”の中で意味がなすように計算されて作られているからです。

 

言い換えるとこの作品の魅力をより味わためには、個々シーンを解釈するスパンを物語全体、ひいては現実や夢といったところにまで広げて踏み込んで行う必要がある(と僕は思う)。

 

多くの作品はむしろ逆です。
個々シーンは良さ”げ”に見えても、全体を通して振り返って観ると矛盾や欺瞞が透けて見える。

 

ラ・ラ・ランドは、個々シーンはあくまでさりげなく、しかし全体を通してみるとその魅力がグッと引き出されるようになっている。

 

そしていきなり矛盾したことを言うようですが、この作品のさらに凄いところは、上記に加え、あくまでエンターテイメントとしての矜持を保っているところにあります。
決して難解で肩ひじはった作品ではありません。

 

さて、散々前置きが長くなってしまいましたが、ここからラ・ラ・ランドの驚異の完成度について僕なりに解説をしてきたいと思います。

続きを読む≫ 2017/03/11 18:19:11

 

僕の祖母は呉で育ち、暮らしていた。
祖父は新聞記者として従軍し、軍艦にのりフィリピン沖で海戦を経験している。
その後祖父は原爆投下直後の広島に記者として足を踏み入れた。
結局祖父はただの一度もその時に見た時のことを家族に話すことはなかった。
何をみたのか?
何があったのか?

 

 

続きを読む≫ 2016/12/04 14:37:04

 

映画,シン・ゴジラ,初代ゴジラ,共通点,相違点

 

 

庵野秀明監督は傑作『シン・ゴジラ』の完成報告の中で次のように言っています。

『怪獣映画は初代ゴジラがあれば十分だと、最初は東宝のオファーを断ったが、初代ゴジラの面白さ、衝撃に少しでも近づく作品にしたいと、結局、新たな挑戦を受けて立つことにした。』

 

東宝でのインタビュー

 

『シン・ゴジラ』と『初代ゴジラ』の共通点とは何か?相違点はあるのか?

 

このエントリーは、シン・ゴジラと初代ゴジラの共通点と相違点から、当時と今の日本の差異を明らかにし、よりシン・ゴジラを深く楽しめるようにしよう、というエントリーになります。

 

 

まずはシン・ゴジラと初代ゴジラを比較するにあたって、簡単に『初代ゴジラ』を未見の方のために以下にストーリーをまとめます。
※完全にネタバレですのでご注意ください。

 

続きを読む≫ 2016/11/25 18:15:25

 

吹き荒れたシン・ゴジラ旋風もすっかり『君の名は。』の驚異的な動員数にかすんでしまいそうになっているけれど、それでも僕は自分の気持ちを整理するためにも、ここで――時期外れになっていようとも――『シン・ゴジラ』についての感想を言葉にして整理しておきたい。

 

 

シン・ゴジラを観たのは公開間もなくで都合3回観た。

 

最初は何かの映画で予告編を観たのだけれど、正直にいって『これはダメだ、一体だれがみるんだ?』と思ってしまった、皆ダイコンとは言わないもののセリフは棒読みに近くゴジラも迫力があるという造形には見えなかったのだ。

 

「庵野秀明もエヴァンゲリオンは凄いけど実写はイマイチなんだろうな、やっちまったな」と思ったのだけれど、それからしばらくして「どうもシン・ゴジラが凄いらしい」というウワサが流れてくるようになる。

 

エヴァンゲリオンもゴジラも好きなこともあり、じゃあ少し観てみるかと軽い気持ちで――事前情報なく――観に行って僕は身体も心もぶっ飛ばされるような強烈な体験をすることになった。

 

少し大げさにはなってしまうけれど、僕は『シン・ゴジラ』でかつて経験したことのない感情を体験したと言っていいと思う。

 

続きを読む≫ 2016/11/07 16:29:07

 

ズートピア,感想,映画評,映画分析,深い,ネタバレ

 

ズートピア観てきました!
GW中、相当お客さんが入っていましたね〜。

 

僕自身も都合2回観たのですが、1回目と2回目で感じるものが全く異なりました。

 

1回目の感想は、正直に言えば『物凄く良くできているけれど、ミスしないことだけを目指した量産可能な作品』というものでした。

 

しかし2回目を観終えて、いや、これはそうじゃないな、と感じました。

 

この作品は『ディズニーという絶対に失敗を許されない枠ギリギリを熱く攻め切ったクリエイターの魂や叫びのあるものだ』、と思い直したのです。

 

この作品には、『どうしても今言っておきたいことがある!』という想いと深味がある。

 

それは『『差別と偏見』という重いテーマを取り扱っているから』という理由では決してありません。

 

『重いテーマ』=素晴らしい、とならないことは幾つか映画や本を手に取ればすぐにわかります。(あえて具体名は挙げませんが)

 

ではこの作品の一体なにがそんなにも熱く、強く、また素晴らしかったのか?(と、僕は感じたのか?)

 

『ただ良質であること』を踏み越えたこの作品のポイントを以下に書いてみたいと思います。

 

 

今日のコンテンツ
・隙のないエンタテイメントとしての『質』
・それでも枠からはみ出る、『今、俺たちはこれを言いたいんだ!』という叫び

続きを読む≫ 2016/05/21 19:10:21

 

ゲーム・オブ・スローンズ,進撃の巨人,パクリ,元ネタ,ハドリアヌスの長城

 

ゲーム・オブ・スローンズが各種オンデマンドサービスで配信されるようになり僕の周囲でもこの傑作海外ドラマにズッパまりする人が増えてきました。

 

次から次へと起こる予想外の展開に加えどのキャラクターも生き生きとして憎らしく、また愛らしく、まさに観るのをやめられない恐ろしいドラマですね、、、。

 

日本で果たして将来的にこんなドラマが生まれる日が来るのだろうか? と考えると悲観的な気持ちにさえさせられる、とにかく図抜けたドラマです。

 

さて、そんなゲーム・オブ・スローンズですが周りの未見の人におススメしようと簡単に内容を説明した時「あれ?それって進撃の巨人のパクリ?」と言われることが何度かありましたので、今回は『ゲーム・オブ・スローンズは進撃の巨人のパクリじゃないですよ』ということをエントリーしたいと思います

 

今日のコンテンツ

 

1) 進撃の巨人とゲーム・オブ・スローンズの共通する『壁』という設定

 

 ・巨大な壁と外にいる化け物(巨人)という設定
 ・ナイツウォッチと調査兵団

 

2) ゲーム・オブ・スローンズの『壁』の本当の元ネタ

 

 

続きを読む≫ 2016/05/03 11:26:03

 

映画評,映画,さざなみ,45years,感想

 

 

2016年4月公開になりました映画『さざなみ』の映画評です。途中よりネタバレありますので未見の方はご注意ください。

 

【あらすじ(ネタバレなし)】

 

結婚生活45周年のパーティを一週間後に控えた老夫婦、主人公ケイトとその夫ジェフ。子どものいないふたりは愛犬と共に仲睦まじく暮らしていたある日のこと、夫宛に一通の手紙が届く。
それは若かりしころの夫の恋人がスイスの山中で凍結死体となって発見されたという内容だった。
当時の姿のまま変わらない元恋人の死体の報せは夫を静かに、だが激しく動揺させる。
やがて夫は動揺するままに妻に昔語りをぽつぽつとしはじめる。
妻ケイトはそうしてこれまで全く知らなかった夫の一面を知るようになる。
そしてその度妻は夫への100%の信頼は静かに、しかし急速な勢いで揺らぎ始めていく……。

 

 

続きを読む≫ 2016/04/19 14:53:19

 

 

セッション、みてまいりました。以下にその感想・映画評をまとめたいと思いますが、この映画、かなり人によって解釈/感想が分かれるだろう映画であるように思います。

 

しかし全く異なる解釈が成り立つことは映画の器の大きさであり面白さである、とぼく自身は思っていますので、その意味で、非常に面白い映画でした。

 

あらすじ以降に、ネタバレありで、感想・批評をまとめてみたいと思います

 

ラ・ラ・ランドも面白かったですね!ラ・ラ・ランド評はこちら
【映画評】ラ・ラ・ランド 必ずもう一度観たくなる物語構造の徹底批評の決定版 ★★★★★

続きを読む≫ 2015/05/09 18:45:09

 

北野映画最新作、『龍三と七人の子分たち』を観てきましたのでその映画評になります。

 

まず総評ですが、いやー、見てよかったです。面白かった。

 

この作品、いわゆるコメディで笑える映画ではあるのですが、一方で、北野武がもつ分裂性・二重性をもっとも作品として昇華できた映画にもなっており、監督北野武、芸人ビートたけしの双方のファンが楽しめる作品になっていたように思います。

続きを読む≫ 2015/04/27 17:45:27

 

ソロモンの偽証(後編)を見てきましたので、その映画評になります。
今回は前篇と異なり、ネタバレありで記載したいと思いますので、映画を未鑑賞のかたはご注意ください。

 

 

率直な感想として、期待外れではありました。

 

 

前篇を絶賛していたのですが、残念です……。
→前篇映画評

 

 

ですが、ただ「この映画つまならなかったよねー」とだけ書いても誰もうれしくないと思うので、今回は大きく3つのテーマで記事を書きたいと思います。

 

1点目。なぜこの映画は後編でダメになったのか?
2点目。この作品の表現しきれなかったテーマについて
3点目。柏木君が本当に欲しかったもの

 

 

一点、原作は未読ですので全て映画に関する評価になる点、ご了承ください。

 

 

続きを読む≫ 2015/04/27 01:18:27

 

こんにちは。

 

機動戦士ガンダム THE ORIGIN 青い瞳のキャスバル を、2週間限定ということもあり劇場に見に行ってきましたので、その映画評を今回はまとめておきたいと思います。

 

当文章の一部ネタバレありますので、『シャア・アズナブル』という男の悲しみに触れたい方は見ることをおススメいたします。

続きを読む≫ 2015/03/13 18:07:13

 

予告篇に惹かれソロモンの偽証(前篇)を見てきましたので、その感想です。

 

わたくし、恥ずかしながら宮部みゆきさんの作品を原作を含みまだ読んだことがないので、映画としての感想に絞られる点、ご了承ください。

 

さて、この作品。

 

まだ前篇ではありますが、めちゃくちゃ面白かったです。

 

4/11に後編が公開予定ということですが、今から待ち遠しくてなりません。
→観てきました。後編の映画評はこちら

 

原作も勢いで買ってしまいましたが、読みたいけれど映画を見終わるまでは読みたくない、、、と嬉しい悲しさを感じております。

 

簡単なあらすじの後、前篇だけではありますがどのような点が素晴らしかったのか、ネタバレなしで書きますので、興味を持たれた方は是非映画をご鑑賞されることをおススメいたします。

 

あとこの作品の宣伝画像、ダヴィンチの最後の晩餐をモチーフにしているわけですが、、、ちょうどユダ(裏切り者)だけ写っていないのですね。

 

いったい誰がユダ(偽証)をしているのか?後編が楽しみです。

続きを読む≫ 2015/03/09 12:17:09

 

こんにちは。

 

ベイマックスがアカデミー賞を受賞したというニュースを見たのを機に、せっかくならと劇場まで見に行ってきました。

 

ベイマックスは、アナと雪の女王の記録的大ヒットの後に公開されるも、「これはスゴイ!」と大絶賛されていた印象でしたので、「どんな風にスゴイのだろう?」という先入観を持って見に行っていました。

 

結果的には、あまりこういう事をいうのもなんですが、「高品質なファミリーレストランのハンバーグ」のような作品だったなぁ、というのが僕の感想です。

 

親子で安心して鑑賞できる。物語的にワルい要素は一切なし。
テンポよくすすむ、驚異の高クオリティ映像。
可愛らしいマスコットキャラ。
破綻なく、器用にまとまったストーリー。
そして、全く滲み出ない作家性……。

 

 

続きを読む≫ 2015/03/03 17:39:03

 

アメリカン・スナイパーの感想と構造分析をまとめてみました。(アカデミー賞もとったみたいですね)

 

米国では「愛国映画だ、反戦映画だ」と議論が激しくなっているそうですが、それも頷けます。

 

この作品の凄いところの一つは、上記いずれの見方もできるように意図的に作られているところです。

 

にもかかわらず、「どっちつかずの中途半端」という印象を一切与えない。強烈なメッセージ性。

 

ラスト・シーンにそれは凝縮されているでしょう。凄い。

 

この映画は、見たひとの政治信条を炙り出す力があります。

 

詳しくはあらすじ以下にまとめていますので、よければどうぞ。

 

※マイケル・ムーアのこのインタビュー面白いです。日本と米国の政治環境の差がよく見えます。
あと、ムーアの政治信条はともあれ、同じモノづくりの人間として作品自体の出来には常に敬意を払うという姿勢は見習いたいな、と思いました。

 

マイケル・ムーアのインタビュー

 

 

続きを読む≫ 2015/02/23 13:30:23

 

おみおくりの作法について感想をまとめたところ、ちょうど似たような『死』を扱う邦画として『悼む人』が公開されたので見てきました。

 

以下に感想をまとめていきたいと思います。

 

一点、原作は未読ですのでここではあくまで映画の内容のみとなっている点、ご了承ください。

 

おみおくりの作法について感想はこちら

 

続きを読む≫ 2015/02/19 01:10:19

 

映画、『おみおくりの作法』を見てきましたので、その構造分析を含め、感想を以下にまとめています。

 

この作品、丁寧で誠実で素晴らしかったのではないでしょうか?

 

様々な要素が綺麗に対比され、にも関わらず控えめで見る価値は大いにありました。

 

比較といってはなんですが、類似テーマで同時期に公開された邦画『悼む人』の感想も別途まとめていますので、よければそちらもご覧ください。

 

邦画『悼む人』の感想

続きを読む≫ 2015/02/09 13:53:09

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